『The Infinit Game』を読んで、仕事について考える。

学習

TED Talkの「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」を見た方も、
書籍の『Start with Why』を読んだ方も、
Simon Sinek氏の新刊に興味を持っていると思います。
この記事では、Simon Sinek氏の『The Infinite Game』のエッセンスを紹介するとともに、
仕事に対するマインドを現場目線、リーダー目線の両方から考えていきたいと思います。

『The Infinite Game』の紹介

『The Infinite Game』は、2019年末にペンギンランダムハウスから出版されたビジネス書です。
著者はSimon Sinek氏で、TED Talkの「優れたリーダーはどうやって行動を促すか」で見たことがある方も多いのではないでしょうか。
Audible版は著者自身がナレーターとして音声を録音しています。

単純に、日本語に訳すると、”無限のゲーム”となり、ゲーム理論の無限繰り返しゲームを思い浮かべる方もいるかと思います。(私がそうでした。)
しかし、この本はゲーム理論(フォーク定理)の話ではありません。
フォーク定理と、結論としては同じですが、本書には数式は一切出てこず、マインドセットの話しかされていませんので、数学的な話を求めている方にはお勧めできません。

2種類のゲームについての定義と各ゲームの目的、ゲームの実例

本書では、物事を2種類のゲームとして区別しています。
それぞれの定義とゲームの目的は次の通りです。

Finite Game(以下、白黒つけるゲーム と呼ぶ):ルールがあり、ゲーム終了時点で勝者と敗者が存在するゲーム。目的は勝者となること。

Infinite Game(以下、終わりのないゲーム と呼ぶ):ルールがあいまいで、永遠に続くゲーム。目的はゲームをプレイし続けること。

白黒つけるゲームの代表例は、ジャンケンや将棋のタイトルマッチ、トーナメント戦のサッカー試合などがあげられます。
終わりのないゲームとしては、政治やプロスポーツリーグ、ビジネスの現場、日常生活が当てはまります。

こうしてみると、生きていくうえでほぼすべてが終わりのないゲームだと捉えることができます。

終わりのないゲームをプレイし続けるために必要なもの

上でみたのように、生きていくうえでほぼすべてが終わりのないゲームだと捉えることができます。
それでは、そのゲームをプレイし続けるために必要なものは何でしょうか。
本書ではいろいろと書かれていますが、ここでは2つを紹介します。

”Just Cause”

一つ目は”Just Cause”です。
私は本書を読んでいる最中は、存在理由や理念ととらえていました。
google翻訳で調べると「大義名分」と出てきました。大体あってるかな?

終わりのないゲームは、ゲームの参加者やゲームを取り巻く環境は変化していきます。
そのような中でゲームを続けるには、強さが必要です。
強さとは、変化する環境への適応力と、環境が変化しても揺るがない理念があることです。
変化する環境に対応できなかったら、ゲームを続けたいと願っても資金的な理由などにより、ゲームから退場されられてしまいます。
また、環境は変わっても、根底にある理念を易々と曲げるのはよくありません。
そのような状態は人で例えるなら八方美人です。
仕事や遊びを八方美人の人と一緒にしたいと思う人はなかなかいないでしょう。
そのような人は一緒にプレーしてもらえなくなり、最終的にゲームを続けることは難しくなります。

また、理念を軽々しく曲げるのは、組織の場合、内から崩壊する可能性を持っています。

強い組織とは、各人が自分の仕事に誇りを持って取り組んでいて、理念で各自がつながった組織です。
そして各自が自分の仕事に誇りを持てるのは、組織の理念やヴィジョンに惹かれているからだといえます。
組織にいる人みんなが、共通の使命感を持って、
「私はこの仕事を誇りに思っています。この仕事を愛しています。」と言える組織は間違いなく強いです。
そのように理念に惹かれて組織に所属していた人は、理念が変わることで離れていくでしょう。

同様に、常日頃から、ヴィジョンを語らない組織も弱まっていくことにも注意が必要です。

リーダーは常日頃から目指す将来像を発信してください。
企業であれば、会社案内や年頭の辞、入社式の時にだけ理念やヴィジョンを伝えるのではなく、常日頃から発信し、将来像として描いている姿になれるように行動してください。
こうすることで理念がお題目にならずに、組織がなりたい将来像を意識してみんなが仕事をすることができるでしょう。

“Worthy Rivals”

二つ目は”Worthy Rivals”です。
私は本書を読んでいるとき、「好敵手ライバル」と脳内で変換されていました。
ライバルとして思い浮かぶのは最近ではフィギアスケートの羽生選手とチャン選手との関係でしょうか。
古くは項羽と劉邦などのライバル関係を思い浮かべる方もいるかもしれませんね。

一つ目にあげた”Just Cause”は内的要因ですが、二つ目のこの”Worthy Rivals”に関しては外的要因のように見えます。

本書の著者であるSimon Sinek氏も、Adam Grant氏をライバル視していたようです。
Adam Grant氏は『GIVE & TAKE』の著者ですね。
どっちの本が売れているか。という勝ち負けを意識して消耗していたことが書いてありました。
この勝った負けたの考え方はFinite Game(白黒つけるゲーム)の考え方ですね。

Infinite Game(終わりのないゲーム)では、相手プレイヤーを叩き潰して勝つよりも、好敵手の存在が自分をより強くする。と考えていくことが合っています。
ライバルの存在によりや緊張感、優位性を常に考える必要が出てくるので良い刺激を与えてくれます。

こうしてみるとライバルの存在自体は外的な要因ではあるものの、相手プレイヤーを叩き潰す相手とみるか、自分の存在をも高めてもらえる相手とみるかは自分自身で決める。と考えると、”Worthy Rivals”も内的な要因だということがわかりますね。

石工の話と仕事への向き合い方について

本書を読んで思い起こすのは石工の話です。

旅人が旅の途中で出会った石工に「あなたは何をしているのですか?」と問いかける逸話ですね。

一人目の男は、「生活のため、石を切り出している。」と答えた。

二人目の男は、「国一番の石切となるべく働いている。」と答えた。

三人目の男は、「みんなで大聖堂を作っている。」と答えた。

一人目の男は生活のために”作業”をして
二人目の男は”熟練工”を目指すために存在しており
三人目の男は”仕事”をしている
と解釈されている話です。

ただ理由もわからずに作業するだけの作業者マインドは捨てて、全体像を把握して仕事しよう。という話はありふれた話です。
この中では三人目の男だけが全体像を把握して仕事をしていますが、それだけで十分でしょうか。
大聖堂を建てることが目的になっているようにも見えます。

前述の石工に関しては後日談で、奥から四人目が出てくる話があるようです。

四人目の男は、「みんなの心の拠り所になるように、大聖堂を作っている。」と答えた。

この四人目の男は、使命をもって仕事をしている。とされています。

私が考えるに、この四人目の男は確かに使命をもって仕事をしているように見えて、仕事を主体的に取り組んでいるようにみえます。
しかしこ、こには、おそらく奥底にあるだろう、理念や信条が語られていないように思えます。
そこで、さらに五人目の男に登場してもらいましょう。

五人目の男、「今もこれから先の未来も争いをなくすために必要なのは、みんな一緒の心の拠り所だと信じています。だからみんなの心の拠り所としての大聖堂を作っています。そしてここに集まってくれているのはこの話を聞いて興味をもってくれた人たちです。」(※1)

もう石工ではいないですねw
こんな石工いたらビビるわw

しかし、大聖堂を建てるためには、この五人目の男が必要です。
この五人目の男がいれば、今までの一人目から三人目までの石工もきっと次のように変わることでしょう。

「生活のために石を切っている。この仕事は楽しそうだと思ったから選んだ。」

「私は石の切り出しの道を極める。みなが私の腕を求めている。」

「みんなの心の拠り所となる大聖堂を仲間と一緒に作っている。」

みな、五人目の男の理念や夢に共感して仕事をして、生き生きとしている感じがするのは私だけでしょうか。

現代のサラリーマンは仕事はあまり選べないかもしれませんが、その会社が掲げた理念に少しは共感できたからその会社で働こうと思ったのではないでしょうか。
フリーランスの方は、そのプロジェクトに少しでも興味があったから。という理由でアサインしているのではないかと思います。

リーダー、経営者の方は、皆が集まってくれた理由、理念をつねに発信し続けているでしょうか。
また、その理念に沿った事業や活動をしているでしょうか。

AIに仕事を奪われる。
終身雇用制度は終わりを迎えた。
こう言われるこの時代、各個人はなにを基準に仕事を選べばよいでしょうか。
私は、その会社の理念や仕事の目的に共感できるか。が重要になってくると考えます。
理念という単語は少し堅苦しい言葉でわかりにくいかもしれません。
ここでは、自分が思い描く未来の世界に、その仕事が必要か。と捉えても良いでしょう。
もっと単純に、自分が後ろめたい気分がなくその仕事ができるか。でも良いと思います。

一方、リーダーや経営層は、優秀な人が自分の会社やチームから出ていかないようにするためにはどうすればよいのか。
上記でも少し触れましたが、
その組織の存在理由を明確にして、共感できる人と一緒に仕事がしたい。と伝えること。
そして、その理由を日常的に内外に発信していること。
さらに、その存在理由に基づいた行動をしていること。
こういったことが重要になってくると思います。
少なくとも私はそういう組織で働きたいです。

本ブログの”Just Cause”について

私は経営者ではありませんが、本ブログは、
「価値ある情報を発信して、世界も私も幸せになる。」という理由で開始しました。

本書を読んで、改めて、私の人生の”Just Cause”を考えてみました。
私の”Just Cause”は、
「世界も私も幸せになるために、一個人でできる事をする。」に落ち着くかなと考えます。
あれ、ブログの開設理由とあまり変わらないですねw

今後も、私が読んだ本で感じたことや、興味を持って調べたことなど、少しでも誰かの役に立つような記事を書いていければ良いなと思います。

Appendix ~おまけ~

※1:みんな一緒の心の拠り所は信仰や宗教と同義だと考えます。
信仰と信仰が衝突して紛争が起きることが多いですが、ここでは触れないようにします。
あれ、こう書いたらもうすでに触れちゃってるような気もするけど・・・

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